Shin-Eiken and PETG(釜山英語教師の会)
第2回日韓英語教師合同研究会報告


新英研九州ブロックと韓国・釜山支部との第2回ジョイントワークショップを2007年9月15日(土)~17日(月・祝日)に行いました。その模様を報告 します。

1 台風接近中の船出
 出発前日(金曜日)に旅行社から、「台風接近のため、17日(返り便)の出航は確約できない。当日中であればキャンセル料はとらないので、返事が欲し い」という、連絡が入り、バタバタして参加・不参加の本人の意思確認を行いました。その結果、火曜日の勤務をどうしても外せない4人が参加を断念。状況に よっては延泊やむなし、の覚悟で5人(長崎3人+熊本2人)+こども4人が予定通り船に乗り込みました。(切符のキャンセル待ちを続けていた福岡の3人も 切符の確保ができず、参加できませんでした)

2 PETGメンバーとの再会・歓談
 予想に反して、大型台風接近にもかかわらず、海は平穏。船酔いもなく無事釜山着。少々雨は降っていましたが、予定通り国際市場内にあるホテルに到着。約 束の時間に釜山支部の先生方8人の出迎えを受け、国際市場の中をおしゃべりに花を咲かせながら夕食会場に出向き、PETGの方のおもてなしを受けました。 プルゴギもおしゃべりも最高で、母親と同伴した子どもたちも満足そう。空腹を満たした後は釜山タワー上から夜景見学、そして、喫茶店でのおしゃべりととど まるところを知りません。もうこれだけで、参加者は来た甲斐があった、と満足。

3 日曜日・セミナー会場へ移動
 日曜日は朝から雨。PETGメンバーの車で、セミナー会場へ移動。車の中でも、おしゃべりは尽きません。尋ねたいことが、たくさんあって、話題がとぎれ ることがないのです。特に英語教師の研修の問題は、たいへん、興味のあるところで、このことについては後で、また、説明します。

4 PETGの活動拠点
 セミナー会場は教職員組合の釜山支部が入っているビルの中。8階建て(?)のビルの1つのフロアーを教職員組合釜山支部が借り切っていて、いろんな用途 に使われています。特に感心したのは、広い会議場と共に日常的に教職員のサークル的活動ができる研修場所が設けられているところ、ここに、いろんな書籍や 資料も保管でき、PETGは毎週月曜日にこの場所に集って例会をもっているとのこと。言わば彼らの活動拠点です。このフロアーには遊具や本、テーブルを備 えたキッヅルームもあり、親たちの研修保障の対策がなされています。日本から参加した中村・小宮の両ママさん先生もこのキッズルームのおかげでセミナーに 集中できました。PETGのメンバーの子どもさんとも交流ができたようです。

5 セミナー内容
 セミナーは日韓双方の挨拶の後、すぐに今回のトピックへ。中味は2本立て。
1つは、critical reading、もう1つはnative speakerの問題について。
 最初に日韓双方からのプレゼン。
 釜山支部から若い先生(Ms.Lee Yeon-hee)が今年の彼らのテーマであるcritical readingについて、理論的な追求の成果と実践例を紹介。その面での追求をあまりやっていない私たちはプレゼンターの自然な英語と研究成果に圧倒され てしまいました。
 日本側からは長崎の小宮先生が読み取りに中心をおいた教材の扱い方とその例としてVulture(三省堂New Crown,3年)の実践を紹介。
2つ目のトピックは外国人指導助手問題。
 釜山支部からは、NEATs (Native English Assistant Teachers) 導入がはじまり、それに関する問題点をmerit、demeritの双方を提起(提起者はMs. Bae Soo-jung)。韓国ではNEATsはいらないという意見が多いそうです。
   日本からは、熊本の畠田先生が新英研誌9月号に特集されたALTに関する記事をもとに急遽日本での導入の経過と歴史、新英研の実践の方向性等についてプレ ゼン。意見交換しました。

6 昼食
 格式のありそうな立派な調度品のあるレストランで伝統的な韓国宮廷料理のおもてなしを受けました。

7 新設ヘガン高校見学と自由行動
 海雲台区にあるMR. Leeの勤務する新設校ヘガン高校を見学。誰もいない日曜日の校舎でしたが、建物の空間がゆっくりしていて、至る所にハイテクの設備が整えられており、今 後の学校建築のひとつのモデルになっているそうです。驚いたのは図書館が6つもあり、そこでは生徒たちは図書の閲覧と同時に自由にインターネットにアクセ スできる環境があることでした。
 台風の影響を受けて風雨が強くなってきたこともあり、5時にホテルに戻り、各自自由行動。途中でNHKが韓国での台風の影響が甚大であることを伝えたこ とを知り、ネットで家族に無事を連絡。畠田・斉藤・緒方は傘をさして国際市場の中を散策。屋台のおいしそうな食べ物を食し、それで夕食終了。翌朝(月)の お天気を心配しながら、1日を終えました。

8 授業参観のためNamil Middle Schoolへ
 翌朝は前日の心配が嘘のような晴天。ホテルの車でNamil Middle School(南一中学校)に向かいました。
 学校の玄関には日本語で「ようこそいらっしゃいませ」の日本語掲示。心が和みました。教頭先生(女性)や授業を担当してくださるJang Ji-hyun先生の出迎えを受けて、校長室へ。校長先生から学校の沿革や概要、教育方針の説明を受け、校舎内を見学しながら、授業の行われる教室へ。こ こは1000人規模の大きな学校(釜山市内では普通らしい)で、校舎ができてから17年ぐらい経過しているらしいのですが、廊下が広く、校舎の掃除が行き 届いているのに感心しました。それに生徒たちがとてもフレンドリーで「こんにちは」「おはようございます」「ようこそ」等のかけ声をあちこちからかけてく れます。聞いてみたら9年生は週1回、簡単な会話を中心とした日本語の授業を受けているとのこと。それに、先生たちも希望者が放課後週2回、日本語担当の 先生から、日本語を習っているとのことで、対話に意欲的でした。
(「日本の学校に放課後そんな余裕は無いよね~」が一同の声)

9 授業参観
 授業対象は中学2年生。教科書を使った普通の授業(授業担当者の話)で、この日の教材はcultural differencesを中心にしたもの。ほとんどall English の授業。ITの設備は各教室ともよく整備されていて、コンピューターに接続されているパネルも大型。Ms. Jang Ji-hyunは慣れた感じでコンピューターと自作のハンドアウトを駆使しながら、生徒とコミュニケーションを交わし、授業を進めていきます。38人の生 徒たちは活気いっぱい。とても印象的でした。後半は私たちも生徒のグループの中に入って、質問の受け答えをしましたが、ほとんど事前の準備はない感じなの に、積極的に話しかけてきます。近頃では、教師よりもはるかに言語運用力の高い生徒が何人もいるとのこと。教科書教材のvideo clipで使われて英 語もかなりのスピード。語学的な授業レベルの高さを伺わせました。
 中休みの時間に、職員室で先生方に紹介され、その後、図書室でたくさんの質問をして、学校を後にし、帰国の途につきました。翌火曜日、帰国後Namil  Middle schoolのHPに私たちの訪問のことがupされているのを知りました。

10 収穫大
 予定がいっぱいだったり、3連休のため切符がとれなかったり、台風接近のため、ぎりぎりのところで、参加することができなくなった先生方には非常に申し 訳ないくらい充実した学ぶことの多い第2回交流となりました。外国の事情を学ぶと言うことはいつも日本との対比があります。第1回目では勤務条件をとても うらやましく思いましたが、今回は英語教師の研修条件にそれをみました。 
   韓国も日本と同じように英語教師の悉皆研が昨年あたりから始まっているそうですが、幾種類かのプログラムが用意されているようです。現在PETGのメン バーたちが参加したり、終了したりした研修は、5ヶ月間職場を離れて大学で勉強し、その後、1ヶ月間外国で研修を積む、というプログラム。前回佐世保での ワークショップに参加した11人の内、3人がその体験者でした。いずれも、満足そうだったのが、印象的でした。日本のように10日間、「強制」というので はなく、希望制であること。夜間の大学に通うのも認められているなどプログラムに選択制があることなど、日本の悉皆研とは「似て非なる」という印象です。 いずれも給料はきちんと保証されていますので、安心して研修に励むことができます。「羨ましいね!」、と日本からの参加者で語り合いました。
(「英語科だけそんなに優遇されていて他教科の先生から文句はでないの」、と質問したら、「自分の学校では全く聞かない。『英語の先生、勉強たいへんね』 と同情はある」と笑っていましたが。)

11 困ったこと
その1:
 団体での船や宿泊場所確保の見通しがなかなかたちにくく、この点は距離的に近いとはいえ、やはり外国だと痛感します。また、国内であっても同じように天 候問題は発生することですが、その際、緊急に代替え手段がとりにくいのが難点です。国内開催とはちがった難しさがあります。
その2:
 セミナーには丁寧な資料が冊子にして準備されていて準備のよさに驚いてしまいましたが、コーディネートした者の陰の声としては、これだけやることが、わ かっていたら、早く教えていてよ~、というのが、正直なところでした。はっきりした内容が知らせられたのは、8月も終わり頃。向こうからのメールを参加者 に転送しただけで、事前にプレゼンテーターを決めることなく、各自に、ちょっとした発言の用意のみを依頼したに過ぎません。そのため、日本からの参加の先 生にはご迷惑をかけしてしまいました。でも、その場で気持ちよくプレゼンを引き受けてくださった先生方には感謝で一杯。すごいな~。

12 最後に
 ひょんなことから始まった日韓合同研でしたが、これで、相互の地で開催できました。次回の合同研は、再来年の2月、熊本新英研担当で第3回目を予定にし ています。場所は未定ですが、2月上旬の土日であることは確かです。
 今回は切符等の世話で、かなり戸惑いましたので、広く宣伝するのをためらいましたが、軌道に乗ればぜひ、他地区のみなさんにも参加していただきたいプロ グラムだと思っています。
  (文責 緒方 智子)